後継者不足の現状と原因|業種別の不在率は?マッチングによる解決策も

市場後継者社長

経営者の高齢化、全国的な少子化に伴い顕在化している課題が「中小企業の後継者不足」です。中小企業は日本企業の99%にのぼり、日本経済を支えている存在です。経営に興味があるけれど、新規の起業はリスクが高いし、かといって身内に事業経営をしている人もそういない……。

そんな方は、今多くの中小企業にとって期待のかかる「後継者候補」だといえます。中小企業の現状について知ることで、これからの日本で求められるキャリアを考えてみませんか?本記事では後継者不足、不在の現状と、解消に向けた取り組みについて紹介します。

後継者不足の現状

中小企業庁によると、中小企業、小規模事業者は国内における雇用の7割を占めています。つまり、日本経済の発展や課題は、中小企業と共にあるといっても過言ではないでしょう。

現状のままだと経営者の127万人が後継者難に直面

平成30年(2018年)の中小企業長官年頭所感では、中小企業の後継者不在問題に言及しています。具体的には、2025年頃に平均引退年齢である70歳を迎える経営者は約245万人に達し、その半数にあたる127万人が後継者未定になるとされています。

現状のまま無対策だった場合、約650万人の雇用、ひいては約22兆円のGDPが失われるとの危機感もあり、2025年までの間、集中的な事業承継の支援期間と位置づけられています。

後継者不在率が65.1%にのぼる調査結果も

別の調査からも、後継者不足の実態が浮かび上がっています。帝国データバンクによる全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)では、全国の後継者不在率は65.1%でした。地域別にみると沖縄県が81.2%、次いで北海道が72.4%と、観光産業に頼る地域が高くなっています。宿泊・観光業は賃金が低い傾向にあり以前から人材不足が危惧されてきましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、さらに厳しい状況になる懸念があります。

7回目の調査となる2020年は、実は過去の調査に比べて後継者不在率が低くなっています。ただし、これを単に「改善傾向にある」とみなすのは早計です。企業数は1999年以降減少を続けており、そのペースも近年では年あたり約10万社と、加速する傾向にあります。休廃業や倒産など、そもそも事業継続を諦める選択をする企業が増えている以上、後継者不在率の高止まりが深刻な課題であることは明らかです。

参考:全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)|株式会社帝国データバンク


休廃業が増加し後継者探しが急務に

少子化による後継者不足に加え、昨今では新型コロナウイルス感染症の影響も如実に出ています。

2020年の廃業件数は、過去最多となる約5万件。同年4月7日に初となる緊急事態宣言が発出されて以降、地域の状況によって自治体独自の緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置などが適用され、飲食店などの業種では短縮営業を求められ続けています。経営・雇用の継続に必要な利益の追求と、感染対策の板挟みとなり、収束も見通せず、これまでの業績が黒字であっても事業を継続しない「あきらめ型」の廃業が広がった形です。

意外に感じられるかもしれませんが、持続化給付金などの支援策により、倒産件数は30年ぶりに8000件を下回る低水準となりました。先行きが見えない中、給与未払いなどが生じる前に会社をたたむ判断をする経営者が増えたものとみられます。

しかし、中小企業を取り巻く状況は逆風ばかりとは限りません。後継者不在の解消や事業継続に向けたサービスや支援については、「後継者不足を解消するマッチングや支援」で紹介します。

後継者不足が深刻な業界とは

大局的な課題である後継者不足ですが、後継者不在の深刻度は業界によって異なります。特に後継者不足が顕著な業界と、その特徴を解説します。

建設業

全国企業「後継者不在率」動向調査(2020)によると、最も後継者不在率が高い業界は建設業で、70.5%となっています。後継者はもちろんのこと若手人材も大きく不足している背景には、建設業ならではの理由があるようです。

3K(きつい、汚い、危険)イメージが強く、激務の割に一部の大手ゼネコンなどを除いて給与水準が高くないため、若者に避けられがちであることは否めません。高齢化も顕著で、55歳以上のベテラン層が35%という高い割合を占める一方、29歳以下は全産業平均を下回る11%と、ミドル世代以上が中心の環境になっています。

また、現場で働いてきた職人気質の人材や、単身または家族経営で働く「一人親方」が多いことから、そもそも事業継続・後継者育成への関心が低い傾向があるようです。さらに人手不足から企業の建設業許可に必要な有資格者も減少してしまうなど、いくつもの要因が絡み合っているのが現状です。

農業

農業も、高齢化と若手の人材不足が進む業界です。自営農業に従事する人のうち、65歳以上が占める割合は69.7%(2020年)、平均年齢は67.8歳という高さです。就農人口も減少が続いており、2000年には約400万人でしたが、2016年には半分の200万人を切っています。

農業の後継者不足においては、定着率の低さが大きな課題です。50歳未満で農業に参入するうちの8割以上が「農家出身ではない」人たちです。異業種、未経験で希望を持って就農するものの、農林水産省の農業研修支援事業では4年以内に35%以上が離農するなど、参入後に理想と現実のギャップを感じることが多いようです。

人材の定着につながる長期的なフォローや、スマート農業などによる効率化で、若い世代が継続して参入する土壌を整える必要性が高まっています。

漁業

一次産業の中でも、漁業は一貫して後継者不在の割合が高く、かつ就業人口全体も減少が著しい業界です。

水産庁によれば、漁業の就業人口は平成の30年間で39.2万人から15.2万人まで約61%減少しています。 65歳以上の割合は11.5%から38.3%まで上昇し、平均年齢は56.9歳となっています。漁業者の多くを占める沿岸漁業の個人経営者では、後継者不在率が80%以上で高止まりしています。

ただし、漁業に関する調査は悲観的なデータだけではありません。漁業者のうち39歳以下の割合は2003年に14.6%で底打ちとなり、以降緩やかに増加してきています。要因としては技能実習生の採用や、震災復興に伴う若い世代の参入などが考えられます。毎年新規に就業する約2千人のうち7割を占める39歳以下の世代に、今後の期待がかかります。

後継者不足を解消するマッチングや支援

後継者を必要とする企業のニーズに応え、後継者不在の課題を解消しようと、公・民問わずマッチングサービスや支援制度が充実しつつあります。後継者を探したい方、後継者として事業に取り組みたい方、どちらにとっても助けになる情報ですので、積極的にチェックしてみることをおすすめします。

後継者候補と企業をつなぐマッチングサービスが増加

人材サービス企業や、中小企業基盤整備機構をはじめとする独立行政法人などが「人材バンク」や「後継者マッチング」といった企業と後継者候補をつなぐサービスを展開しています。黒字ながら後継者不在で廃業を決める中小企業が多いいま、マッチング事業はさらに増えていく可能性が高いでしょう。

そこで重要になってくるのが、数あるサービスの中から「自分に合ったサービス選び」をすることです。事業承継を考えるうえで何を重視するか、自身の優先度を洗い出したうえで、特定の業種に強い、または地域企業との信頼関係が厚いといった特長を基準にチェックすると選びやすくなります。

後継者候補向け求人サイトや公的機関のマッチング支援

経営の知識があっても、やはり企業とのご縁がなければ力を発揮できません。人材サービス業の企業がそのノウハウを生かして提供するマッチング支援サービスや、経産省が認定する支援事業の創業スクール、事業承継トライアルなどの活用がおすすめです。

就職・転職をサポートする人材サービス業は、蓄積されたデータや、強みの業種・エリアがあり、後継者として入るべき企業選びの支えとして最適です。後継者サーチは地域の中小企業と強固な信頼関係を築いており、「〇〇県で事業承継したい」といった企業探しの強力なサポートが可能です。

創業スクールはいわば公的な有料の講座で、全国の商工会議所などが実施しています。経営クラス向けセミナーは数多くありますが、どれを選ぶべきかわからない人にとって、公的に認められている事業は安心感が強いのではないでしょうか。地域の商工会でのつながりは、その後実際に事業を経営する時にも生きてくるはずです。地元の創業スクールで知識をつけ、中小企業の求人に強いキャリア支援サービスを利用するといった活用方法が考えられます。

事業承継トライアルは、中小企業庁が企業と後継者候補の間に入っているため、優良企業の見極めや事業内容の認識などで、ミスマッチや失敗が起きる可能性が低いのがメリットです。企業側の後継者育成=後継者候補としてのトレーニングを専門のメンターがサポートするため、相談相手に困ることがありません。

企業向け事業承継補助金などの施策

人材難に見舞われている昨今は、行政による事業の担い手へのサポートが手厚くなっている時期でもあります。事業承継時の贈与税・相続税の支払い負担が事実上なくなったり(平成30年度税制改正)、持続化給付金や雇用調整助成金をはじめとした支援制度がスタートしたりと、今までになく支援体制の充実が図られています。

これらの情報に敏感になり、うまく活用していくことで、資金面でスムーズに事業を進められる可能性があります。

企業と後継者候補のマッチングが事業存続のカギ

後継者不足が明確な課題として認識されている昨今、事業承継への支援や、企業と後継者候補をつなごうという取り組みは増加傾向にあります。情報を得やすくなっている分、自分に必要な情報をしっかりと収集し、業種や地域の実情に合ったサービスを活用することの重要性も高まっています。

後継者サーチでは、経営者に立候補したいハイクラス人材向けに、後継者不在企業をご紹介するキャリア支援サービスを提供しています。

地方に数多く存在する後継者をが必要とする優良企業と、強固な信頼関係を築いており、安心の企業選びをサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

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